〜くもフェチの男〜

　ポンコツマスィ〜ンがエンジンオイルを滴らせながら、時速９０
ｋｍで北へと突っ走る。

昨日までは法定速度なんかそっちのけで車を走らせていたが、エン
ジンが熱くなるとエンジンオイルがミスト状に吹き出し、ミストと
なったエンジンオイルは電子系統の発火部分に酸素７５％、エンジ
ンオイル２０％、水素４％と１％の悪運が程よく混合された時に異
常発火。

その発火はエンジンを吹き飛ばしてガソリンに引火。そしてトラン
クに詰め込んだ役立たずの中華鍋や聡お気に入りの森高千里のＣＤ
もろとも吹き飛ばしてしまうぞ！という聡の意見を１００％採用し、
時速９０ｋｍの自主規制走行を行う事にした。

　それにしてもオーストラリアは雄大だ。Port Macquaireの街を出
発して少しすると、そこには地平線が広がる世界があり、紺碧とい
う言葉がふさわしい空が地平線まで広がり、地平線をくっきりと際
立たせてくれる。

私は日本のこじんまりとしたきめの細かい自然が大好きだが、オー
ストラリアの雄大な自然も大好きだ。そんな中でもオーストラリア
の雲がお気に入りで、日本では見たことがない、大陸特有なのか、
一つの塊が非常に大きい雲を見たりすると心がときめいてしまう。

志「ちょっとあの雲見て下さいよ。オーストラリアの雄大な自然だ
　からこそのあの大きな雲。なんか日本と違って大陸を感じさせて
　くれると思いませんか？」
聡「ん〜。そうか〜？確かに大きいけど、俺には単なる大きな雲に
　しか見えねぇーけどな〜」
志「そーんな！ちゃんと見てやってくださいよ。あんな綺麗な雲は
　他では見る事出来やせんぜ。旦那！」
聡「そんなの何回見たって一緒だよ。なに雲一つで心ときめかせち
　ゃってるんだよ。志帆はあれじゃねーか？雲フェチなんじゃねー
　か？」
志「く・雲フェチ？！」
聡「そうだ。おまえは雲フェチの雲マニアだ。きっと雲を見て興奮
　したりするんだよ。」
志「…」
聡「俺の方から雲に言っといてやるよ。妊娠しないようにってな」

　私は目尻からこぼれる熱い涙を頬に感じながら、カメラのファイ
ンダーを覗き、お気に入りの雲をフィルムに収めて雲にさよならを
告げた。

　私はそのまま笑い泣き疲れ、助手席で眠ってしまった。私が目を
覚した時、太陽の強烈な光が私の視界に飛び込み、聡からクィーン
ズランド州に入った事を告げられた。

雲フェチ男が撮ったお気に入りの雲です。この写真だと迫力とか綺
麗さが全然感じられません。本当はもっと雄大で、すごいんだけど
な。ちなみに聡以外の人に雲の話しをしても、話しをそらそうとさ
れたり、嫌そうな顔をされます。そりゃそうだ、俺だって雲の話し
なんか聞きたかないもん。