〜五月蝿い〜

　んぼんぼばたばた言わせながら、エアーズロックのある街ウルル
に向かう。昨日と比べて車は見違えるほどオンボロになった。割れ
た窓ガラスを適当に塞いだ段ボール。そして右後部のタイヤだけ交
換したせいで、ハンドルを放すと左へ左へと車は曲がっていく。恐
らく左右のタイヤの空気圧が合っていないのであろう。

　ぷ〜ん…

志「隊長！たったいまオーストラリア産の蝿と思われる生物が、後
　部破損個所から侵入し、我が物顔で飛び回っている模様です！！」
聡「直ちに目標を確保し車外へ放り出せ」
志「ラジャー」

　オーストラリアが野生の宝庫であると言うのはよく聞く話しであ
る。カンガルーやコアラ等の固有種がいる事でも有名だ。しかし昆
虫が多いというのはあまり聞かない。動物が多いのだから昆虫が多
いのも当然なのだが、それはあまり宣伝していないようだ。

私の大嫌いなゴキブリも、黒くてでかいのがどっさりいる。しかも
彼らは日本のと比べるとよく飛ぶ。オージー同様、ゴキブリも活動
的なのだ。そして蝿も多い。

　蝿の習性なのだろうか。シドニーでの目撃談で、早朝にランニン
グをしている金髪の奇麗な女性がいたのだが、白いＴシャツを着て
いるはずの彼女の背中は真っ黒だったそうだ。よく見て見ると、黒
いのは全て蝿だったとの事。

　その蝿が時速９０ｋｍで走る車内に紛れ込んだようだ。私は蝿に
対して嫌悪感を抱いていないのでどうでもいいのだが、助手席で暇
だったので、その蝿を捕まえて外に放り出した。

志「隊長！！たった今目標物を捕獲し、車外への排出を完了しまし
　た！！」
聡「ご苦労であった。ご褒美に頭を撫でてあげよう」
志「ありがとうございます！」

　昼をだいぶ過ぎた頃、小腹が空いた事もありガソリンスタンドで
給油と食事を採る事にした。車をガソリンスタンド側の駐車場に停
めてドアを開けると、

ぷい〜んぷい〜んぷい〜んぷい〜んぷい〜んぷい〜んぷい〜ん

　そこには何千という蝿が飛び交っていた。歩いているだけで目の
周りと唇の周りに蝿が群がってくる。常に羽音が聞こえ、払っても
払ってもきりがない。なぜ目と唇なのだろう。水分を感じるところ
に群がってくるのだろうか。目に産卵でもされたらどうしよう。

目や口から蛆虫が湧いたりして…。

　昼食のハンバーガーを食べていても口の周りによってくるため、
一緒に食べてしまいそうになる。ハンバーガーにも蝿が止まったり
するのだが、それを汚いと気にしていたら食べる部分が無くなって
しまう。

　私たちは、「こりゃかなわん」と蒸し暑い車の中に逃げ込んだが、
既に何十匹という蝿が割れた窓から入り込んでいて、私たちの帰り
を待っていてくれた。

蝿「ぷいぷいぷい〜ん」（お帰り〜待ってたよ！）
聡、志「ぷいぷいぷいいーん」（助けてくれ〜）

　私たちは段ボールで蝿を外に追い払い、早々に出発した。

〜カンガルーを食らう〜

　ウルルに到着した私たちは、エアーズロックリゾートという区域
のＹＨＡに転がり込んだ。リゾート地のＹＨＡはさすがにでかい。
大きな食堂やプールまで付いている。

　食堂にはバーベキューの設備もあり、私たちはそこでカンガルー
とエミューとワニの串焼きセットを注文し、この日を振り返った。

　車の窓ガラスを割られ盗難に遭い、警察に駆け込んだこの日。聡
にとっては辛かったかもしれないけど、私にとってはなかなか出来
ない経験が出来て良かったと思っている。そして今日の締めくくり
で普段食べられないものを食べている。充実した一日だ。

　ワニは鳥肉に似た味がした。エミューとはダチョウに似た大型の
飛べない鳥だが、これもまぁ鳥肉の味だ。最後のカンガルーはなん
の味だろう。忘れてしまった。おいしくなかったのは覚えているが、
印象に残る味ではなかった。

味覚的においしくなかったカンガルーだが、毎日何十匹と見ている
死骸が頭を過るので、気分的にも不味いものだった。

　食堂ではバンドマンが演奏を行なっていて、大盛り上がり大会に
なっている。

　アリス・スプリングスからウルルに向う途中で見つけた偽エアー
ズロック。私たちはずっと本物と思っていたのですが、別の旅人か
らあれは偽物だと指摘されました。
地図を広げて見るとなるほど。見えるわけが無い位置にこの岩は存
在していました。けどなかなか奇麗な形で大きい岩だ。