〜死刑囚の怨念〜

　私の目の前にある重く錆びたレバーを手前に引くと、檻の中の床
が重く鈍い音をたてて開き、そこに立たされていた死刑囚は、高さ
２０ｍの暗闇に落下する。体が地面に到着する事はない。首に巻か
れた綱が体を支えるからだ。

　体が落下した時の衝撃に綱は耐えられるが、首の中を通る神経や
血管は耐えられない。

　　　　　ブヂッ…

という音と共にすべて切れて、死刑囚は即死する。

　私たちは現在は使用されていないファニーベイ刑務所の、死刑執
行部屋を見学していた。この部屋は過去に２回だけ使用された事が
あるそうだ。実際に落ちた穴を覗いてみるが、真っ暗で底を見る事
はできない。

　私は霊感が全く無いので、霊の存在を信じていないのだが、そう
いったものが大嫌いだ。スカイダイビングの次の次くらいに嫌い。
そのため、そういう場所にカメラを構えるのは抵抗があったのだが、
少し強がってシャッターのボタンを押した。

パシャ！パシャ！

　フラッシュをたいて、穴の開いた床と、床を開くためのレバーを
フィルムに収めて、私たちは刑務所を後にした。

栄「次どこに行く〜」

　助手席に座る栄里が、運転している聡に話し掛けた。私は後部座
席でのんびりモード。

聡「そうだな〜。刑務所はあまり面白くなかったから、魚の餌付け
　ショーでも見に行こうか」

　と言ったのと同時に、

ガギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ！

と言う音が車の下から鳴り響き、運転席と助手席のシートが左右に
激しく揺れた。揺れ幅は３０ｃｍ。乗ってる聡と栄里の体も激しく
揺れた。

　聡は車を急停止させた。

聡「なんだ今の？」
志「後ろから見たら、どえらい事になってましたよ。何かしたんで
　すか？」
聡「いや、何も…。普通にアクセル踏んでいただけ」
志「ちょっともう一度踏んでもらえますか？」

ガギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ！

　再び凄まじい揺れが起こって急停止。今までのオンボロ至上で最
悪の壊れっぷりだ。私たちはただの故障以外の何かを感じ、その日
の予定を全て中止した。

そして栄里をコンドミニアムに置いて、修理工場へと向った。

　上の写真のレバーを引くと、下の写真の穴が出現する。そして…