〜カカドゥツアー（偽）で大自然を満喫！〜前編

　ダーウィンには、野生動物の宝庫であるカカドゥ国立公園がある。
うっそうと茂るジャングルには、カラフルな野鳥やオーストラリア
固有の爬虫類がどっさりいるらしい。

カカドゥは、ダーウィンから東へ２００ｋｍ以上行った場所にある
ため、公園内で一泊以上するツアーが多い。大自然の中にテントを
張り、野鳥の声を聞きながら満点の空の下で眠るのだ。栄里がオー
ストラリアに来たのもこれが目的だといっていい。

私と聡は、毎日食事を作ってくれる栄里（家政婦兼母親状態）の労
をねぎらうため、日帰りカカドゥツアーを申し込んだ。お金を払っ
て上げる余裕はないので、がっちり頂くけど。

申し込んだツアーは、日帰りなのに盛り沢山の内容だった。カカド
ゥへの移動で、かなりの時間が取られるはずなのになぜだろう。私
と聡は多少の疑問を感じながらも、喜声を発し部屋の中を駆け回る
栄里には何も伝えなかった。

　ツアーのマイクロバスが、コンドミニアムの玄関に到着したとき
疑惑は確信へと変わった。カカドゥへの道は大変悪いので、４ＷＤ
のクルマでないと厳しいのだが、目の前にあるのは車高の低いポン
コツバス。

私と聡は顔を見合わせて、カカドゥには行けないことを覚ったが、
はしゃぎたい気持ちを抑えながらも、口元が緩みっぱなしの栄里に
伝えることはできなかった。

　最初に連れて行かれたのは、朝食付きカメツアー。朝食を食べな
がらオーストラリア産の貴重なカメに餌を食べさせてあげるという、
とてつもなくデンジャラスな企画だ。想像しただけで身の毛がよだ
つ。

朝食か餌だかよく分らないパンを渡されて、もぐもぐしながら餌を
あげる。カメはのそ〜っとしながら餌にぱく〜んと食らいつく。餌
と共に指まで噛み付かれる可能性が０％ではないので、集中力と俊
敏性が要求される。良い子とムツゴロウさんは指を噛まれないよう
注意してほしい。

　次に連れて行かれたのは、ジャンピングクロコダイルツアー。ダ
ーウィンの河には、ワニがうじゃうじゃいて、人間を襲う狂暴なも
のやワニ皮になるもの、人間の食料になるものなどさまざまいる。
そしてこのツアーでは、一風変わった飛び跳ねるワニを見せてくれ
るそうだ。

飛び跳ねると言っても、陸上を元気に跳ね回るわけではなく、水中
に潜むワニがイルカの曲芸のように水上に飛び上がるのだ。私たち
が船に乗り込むと数匹のワニが後をつけてきた。

ツアーの前から跳ぶ跳ぶと聞いてはいたが、まさかあれほどまでと
は思わなかった。全長３ｍ以上あるワニが、尻尾の半分くらいまで
飛び上がり狂暴な牙を見せ付ける。

サービス精神旺盛なワニだ！と感心していたら、飛び上がる仕組み
は非常に簡単だった。船のデッキで、係員が肉片を垂らした棒を操
っていたのだ。ワニは餌につられて飛び上がるだけ。まぁそれなり
に迫力はあるので楽しめるけど。

餌を狙うのはワニだけでなく、上空にパンを投げると鳥が見事に捉
えるというショーもやっていた。

　この時点で昼は過ぎていた。栄里もカカドゥに行けるのかしら？
と思いはじめていた。

　空跳ぶワニたち。小さいワニの方が俊敏なのか高く飛び上がるが、
大きいワニだってかなりのもの。餌を吊るしている添乗員も手慣れ
たもので、なかなか餌を与えません。