〜２人の行き先〜

　車の修理が終ったのは午後２時を過ぎた頃だった。時速３０ｋｍ
以上出すと運転席がガタガタと音をたてて揺れる異常は直っていた。
今までの旅で唯一リッチな気分に浸ることが出来たダーウィンを後
にして、今日の目的地であるキャサリンを目指す。

　また聡と僕の旅が始まったが、これからの予定がまったくたって
いない。オーストラリアを一周したいとは考えていたが、聡が滞在
できる期間を考えるとそれは難しくなってきた。

聡「俺さ、あと３週間弱しかオーストラリアにいられないんだけど
　これからどうする？シドニー発のチケットは既に持っているんだ
　けど、何かアイデアある？」
志「車をすっ飛ばせば、３週間でシドニーに戻ることは可能ですが、
　それだと車を走らせるだけの毎日になってしまい、観光は出来な
　くなります」

聡「そんな旅は嫌だな。俺の好みじゃない」
志「その意見が却下なら、パースからシドニーまでインディアン・
　パシフィック鉄道を使う手があります。確か３〜４日ほどで到着
　するはずです」
聡「その場合、車はどうするの？」

志「パースで売り払うか、鉄道に載せてシドニーまで運ぶこともで
　きます」
聡「その方法が現実的かな」
志「そうですね。これから１週間かけてパースまで行って、数日滞
　在したら鉄道でシドニーに戻る。そこでまた数日のんびりしてか
　ら日本に帰るのが調度良いんじゃないですかね」

聡「どちらにせよ。パースに到着するまでに決めれば良いんだよな。
　焦ることはないよ」
志「ですね」

　選択肢はまだあった。パースに到着したら２人が別れること。僕
は車の旅を続けて、聡は飛行機でシドニーに帰る。このアイデアも
現実的なアイデアだったが、口には出さなかった。僕は以前の経験
で一人旅の寂しさを知っていたからだ。

　オンボロ車がキャサリンに到着し、僕たちは２週間前に来た時と
同じＹＨＡに泊まった。荷物を大部屋に入れて寝転がっていると、
聡は１８歳くらいのなよなよとしたオージーに話し掛けられていた。

オ「僕はセールスマンでね。オーストラリアをいろいろ飛び回って
いるんだ」
聡「ａ〜ｈａ〜」

　僕は固いベットで横になりながら２人の会話を聞いていた。

オ「けどあまり売れなくて大変なんだよ」
聡「Ｏｈ！Ｙｅａｈ」

　固いベットも久しぶりだと気持ちが良い。この日は久しぶりの運
転に疲れたのか直ぐに寝てしまった。

オ「僕はＹＨＡに泊まるの初めてなんだ」
聡「Ｒｅａｌｌｙ？」

　聡は迷惑そうに相槌を打ち続けていた。

　道中にあった寂れたガソリンスタンドです。オーストラリアはイ
ギリス英語を採用しているので、ペトロールステーションと呼んで
るけどね。ペトロールスタンドだったかも。忘れた。ここはめずら
しくおっさんがペトロールを入れてくれているけど、普通は全てセ
ルフサービス。注ぎ終ったら店の中にお金を払いに行くようになっ
ています。