〜車の修理点検その１（シドニーにて）〜

ＲＲＲＲＲＲＲＲＲＲＲＲＲ！

志「はいもしもし、志帆ですけども」
男「もしもし志帆さんですか。車の修理点検に来た、健二（匿名）
　と申しますけども。今マンションの玄関にいますので、降りてき
　ていただけますか？」
志「はい。分かりました。今、下に降ります」

Ｃｈｉｎ！

志「聡。頼んでおいた、修理屋さんが着ましたよ。一緒に駐車場に
　行きましょう」
聡「おー分かった。早速行くとするべー（アイドルのグラビアを真
　剣な眼差しで見つめながら…）」

　私たちが玄関に出向くとそこには、いかにも”メカニックです！”
という感じの男が、ワゴン車の前に立っていた。私たちが軽く会釈
をすると、彼は満面の笑みに胡散臭さを漂わせて話しを始めた。

健「志帆さんですね初めまして私が健二（匿名）ですいやー友人の
　方から話しは聞いていますよラウンドに出るんだっていいやーラ
　ウンドは良いよ俺も若い頃は車やバイクで一周したもんだけどさ
　大地は雄大で自然は綺麗でたまらないし星空なんかもスゲー綺麗
　で俺は忘れられないよ特に西海岸の海の綺麗さなんて最高だよも
　ちろんそこらへんも行くんだろう？あそこは絶対行った方がいい
　と思うよけどあの頃は俺も若かったからなーいろいろと無茶をし
　たもんだよラウンドしてると色々な女に出会えるからさ俺も若さ
　に任せて色々いい思いをさせてもらったよ一番思い出に残ってる
　のがなパースで会った女だけどさ…」

志「あのすみません。別に女の話しはどうでも良いので、車の修理
　点検をしてもらいたいんですけど」
健「あれ！嘘でしょう？女の話しとか嫌い？それともパースじゃな
　くて別の場所の女の話しが聞きたい？」
志「いえいえ。女は超好きですけど、それよりもまず先に僕の車を
　見て頂きたいんですけど」
健「おお！そりゃそうだな。今日はそのためにここに来たんだよね。
　危うく今日の目的を忘れるところだったよ。そんで車はどこ？」
志「あっちの駐車場です」

　健二（匿名）は乗ってきたワゴン車に乗り込み、私が指差した先
にある駐車場へと車を走らせた。

聡「おいおい志帆よ。何だよあいつは。会って早々自分の女の話し
　をおっぱじめたけど大丈夫かい？」
志「一応知り合いの知り合いなんで、値段が安くなるという事で頼
　んだんですけど、めっさ胡散臭いですね」
聡「俺さー。初対面とかでベラベラ話しする奴って信用できないん
　だよな」

聡は正しかった。

−車の停めてある駐車場にて−

健「なるほどこの車ね。結構年期が入ってるな。これだと念入りに
　チェックしないと危ないぞ。まあ俺が見れば問題は無いけどね」
志「はぁそうですか。それではよろしくお願いします」
健「まずはエンジン周りの確認をするか。ちょっとボンネット開け
　てもらえる？」
志「はい」

健「うわちゃー。こりゃ酷いな。エンジンオイルでエンジンが真っ
　黒だ。どこかからエンジンオイルが大量に漏れてるよ。それに電
　気系統のプラグがかなり古くなってるな。あとエアポンプも交換
　しないと駄目だな。崩壊寸前だよ」
志「そんなに酷いですか」
健「何が酷いってケアンズで会った女より酷いね」
志「例えが良く解らないんですけど」
健「俺一人じゃ手に負えねぇーって事だ。がはははは。と言うわけ
　で、ちょっと知り合いに電話して、いろいろと工具とか持って来
　てもらうから、家でゆっくりしていてくれよ」
志「分かりました。じゃあ終ったら電話して下さい。」

−部屋にて−

聡「あいつさ、俺が見れば問題無いとか言ってなかったっけ」
志「あー。言ってましたね」
聡「言ってから知り合いに電話するまで、速効だったな」
志「まったくじゃ！ぷりぷり！」

−２時間後−

ＲＲＲＲＲＲＲＲＲＲＲＲＲ！

聡「おい志帆。電話だぞ」
志「どうせ健二（匿名）ですよ。今アイドル写真集に夢中なので、
　代わりに出て下さいよ」
聡「何！アイドル写真集に夢中で電話に出られない！なら仕方がね
　ーな。はいもしもし」
健「あのー健二（匿名）ですけど、車の事なんですけど、知り合い
　に頼んでも出来なかったので、知り合いが経営している工場に持
　っていきますわ。ほんじゃ。出来たらまた連絡します」
聡「あの、いつくらいに出来そうですか？」
健「近いうちに出来ますわ！そんじゃあ…」

Ｃｈｉｎ！

志「やっぱり健二（匿名）でしたか？」
聡「ああ、そうだけど。なんか修理できなかったとか言ってたよ。
　ほんで工場に持っていって直すから少し日数かかるってさ」
志「げぇ！まじっすか。僕たちは一体いつになったら出発できるん
　でしょうね」
聡「まったくじゃ」

−１９９８年０７月２７日−

ＲＲＲＲＲＲＲＲＲＲＲＲＲ！

志「はいもしもし志帆ですけども」
健「もしもし！健二（匿名）です。車やっと直りましたよ。これか
　ら、マンションまで届けますんで、数分したら駐車場まで来ても
　らえますか？」
志「はい。分かりました。数分後伺います」

Ｃｈｉｎ！

志「聡。車が直ったみたいですよ。後ちょっとしたら来るみたいな
　んで、下で待ってましょう」
聡「ワカリマシタゴシュジンサマ（なぜかポンコツロボットの声帯
　模写をしながら…）」
志「では下に行きましょう」

−車の停めてある駐車場にて−

健「いやー。お待たせお待たせ。エアポンプがなかなか交換できな
　くてね。結構時間かかっちゃったよ。けどこれで大丈夫。全部点
　検しておいたし、エンジン周りもばっちりだよ」
志「そうですか。ありがとうございます。これでやっと出発できま
　すね」
健「いや、その前に一応慣らし運転しておいた方が良いよ。何百キ
　ロか走って、本当に大丈夫か確認してからラウンドに出た方が良
　いよ。それとね、オーストラリアを一周するのは、人間にとって
　も車にとっても過酷な旅だから、異常を感じたら直ぐに休憩した
　方が良いよ」
志「そうですか。それではラウンド前にキャンベラにでも行ってみ
　ますよ」

健「そうだね。あそこは何も無くてつまらない上、今の時期は寒い
　だろうけど、慣らし運転にはもってこいだよ。ぜひ行っといで、
　そして好みの女の子を見つけてきなよ」
志「好みの女の子はともかく、早速明日にでも行ってきますよ。僕
　たちにはあまり時間が無いので」
健「そうか気をつけて行っといで、女関係で良い思いをしたらちゃ
　んと連絡するんだぞ」
志「分かりました。じゃあ聡。明日早速試運転出発しますけど、良
　いですか？」

聡「（自分の喉をトントンとチョップをして、宇宙人の声帯模写を
　しながら）ワレワレハウチュウジンダ。」（意味不明）