〜悲しみカンガルー〜

志「一匹、二匹、三匹…」

　サーファーズパラダイスからブリスベンを抜けてロックハンプト
ンに向かっていると、何匹ものカンガルーが目に付いた。自然と動
物が溢れるオーストラリアでは、様々な動物を見ることが出来る。

カンガルーを初め、ダチョウの次に大きいといわれるエミュー、運
が良ければ野生のコアラも見ることが出来る。戦時中に連れてこら
れ、そのまま野性化したラクダなんかも内陸部にはいるらしい。

　しかし悲しいことにこの日数えていたカンガルーは、車に轢かれ
て死んでいったカンガルー達だ。道端にころがるカンガルーは大変
多く、一日に何十匹もその姿を確認できる。

カンガルーは夜行性の生き物なので、昼間は大地に寝そべって暮ら
しているのだが、夜になると大きく発達した後ろ足で、逞しく飛び
回る。そのため夜間走行しているドライバーは、カンガルーの発見
に遅れて轢き殺してしまうのだ。

もっとも発見したところで、多くのドライバーは速度を落とさない
かもしれない。カンガルーを轢いても車に傷か付かないように、車
の前面を被ったカンガルーバンパーと呼ばれる物があるからだ。残
酷なようだがこれがあるおかげで、カンガルーが飛び出してきて急
ハンドルを切ってしまい事故を起こす人間が救われるのだ。

しかし道端にころがるたくさんの死骸をみて、人間が助かって良か
ったとは到底思えない。どこの国でも人間と動物が共存していくの
は難しいのかもしれない。

〜ぬるぬる〜

　カンガルーバンパーの付いていないポンコツ君を走らせていると、
にわかに雲行きが怪しくなり大雨が降り出した。降りしきる大雨の
中をワイパーキュッキュッと走っていたのだが、対向車が跳ね飛ば
す油混じりの水を何度も浴び、フロントガラスが油膜でぎらぎらに
なってしまった。

そんな時はあれを使って油膜をとるしかない。それは聡が私に騙さ
れて買ったシャンプーだ。

聡がオーストラリアに来てすぐの事。聡はボディソープを持ってこ
なかったので、スーパーに買いに行くことになった。簡単に見つか
るだろうと思っていたのだが、どの商品を見てもＢｏｄｙＳｏａｐ
とは書いない。

探し方が悪かったのか、オーストラリアでＢｏｄｙＳｏａｐと呼ば
ないのか分らなかったが、探しているうちにＳｈａｍｐｏｏと書い
てあり、使用方法にＢｏｄｙと書いてある商品が見つかった。この
商品は違うんじゃないかな？と思うと同時に、これは髪の毛も体も
洗えるシャンプーなんだと解釈して聡に買わせてしまった。

聡も不審に思っていたらしいのだが、他にそういう製品が見つから
なかったためしぶしぶそれを購入し、その日の夜からシャンプーを
泡立てて使っていたようだ。

そして風呂から出て来るたびに、「このボディソープやけにぬるぬ
るするよ」と誰に訴えるでもなくブツブツと言っていた。２、３日
は風呂から出るなり「ぬるぬるする」と言っていたのだが、そのう
ちボディソープを使わなくなってしまったらしい。

聡が「ぬるぬるする」と言うたびに、ばれないように腹を抱えて笑
っていたのだが非常に残念だ。

その偽ボディソープも何かの役に立つだろうと持ってきていたのだ
が、早速使う時が来た。車をガソリンスタンドに止めて私は給油を
行い、聡が雑巾片手に窓を拭いていたのだが、その時も「ぬるぬる
する」と嘆いていた。

ロックハンプトンに到着した時には日はとっぷりと暮れていた。

粗い石で出来た道路を撮ったつもりなんですが、この写真ではいま
いち伝わらないですね。ポンコツ君でこの道を走ると騒音が激しく
てＢＧＭが聞き取りづらかったです。