〜ラフティングをやろう！Ｐａｒｔ２〜

　ウキウキを抑えながら、ゴムボートに乗り込んで午後の部の開始。
午前と同じく緩やかな流れの中、打ち解けたクルーで談笑しながら
ボートは進んでいく。私のインストラクタは下ネタが超好きなのか、
ブツが３インチの男性がラフティングをやって、全裸で岩に打ち上
げられた話しを披露していた。

午前中でだいぶ要領を掴んで、右カーブ左カーブに対処できる様に
なったので、だいぶ他のチームへも目が届くようになってきた。見
ているとオージーがインストラクタをやっているチームは、積極的
にボートを転覆させているようだ。だが日本人インストラクタはそ
れをやっていない。

なぜだろう？日本人インストラクタが一様に手を抜いているとは思
えないから、会社から日本人の客には無茶をするなと言われている
のだろうか。川に落ちた方が断然面白いのに。まぁいいやこっちか
ら率先して川に落ちるようにしよう。

　何度か川に投げ出され、だいぶラフティングを満喫してきた頃、
最後の難関が押し寄せようとしていた。高さ３ｍの滝が一番最後に
迫っているという。高さ３ｍというと一般家庭の床から天井よりも
高い。そこからボートで落ちるというのは恐怖だ。

その滝から落ちると、間違いなくボートがひっくり返り、思わぬ方
向に投げ出され、岩に激突する危険があるというので、ボートの上
に座って円陣を組み、隣の人の肩を抱く姿勢をとらされた。

「落ちるの恐い…」

川は最後の難関を出し惜しむかのように、ゆっくりとボートを滝へ
と近づけ、流れに相応しくない崩落音を数ｍ先で響かせていた。隣
の人の肩越しに滝を見ると、途切れた川にボートの先端が掛ろうと
していた。

「来た！」と思った時には腰からボートが離れて行き、内臓が持ち
上がる感覚を味わっていた。着水に備え奥歯を噛み締め、首を窄め
る。恐怖を感じる時間は長い。音が聞こえない。

大きな音が聞こえた時には、水の中に叩き込まれたいた。水面へ出
るために必死でもがくが、どちらが上か分からない。水の落ちる音
が全方向から聞こえてくる。救命胴衣の浮力に任せ水面に出るのを
待つが、なかなか浮上しない。

そんなに深く潜ったのだろうか？耳を澄ますと「キャーキャー」と
いう笑い声が聞こえてくる。「みんなの声だ…。みんなもう水面に
いるんだ。なんで俺だけ水中にいるんだろう」

頭の上に何かを感じ、手をそっと伸ばすと、そこにはゴムの手触り
があった。「やばい！」目を開けるとひっくり返った黄色いゴムボ
ートが、太陽の光で輝きながら真上で横たわっていた。

ボートに触れながらどうにか外に出ようと試みるが、手を伸ばした
先はボートに溜まった空気を掻き乱すだけ。どうにか触れる指先で
ボートを伝いながら外に出た時には、みんなは満面の笑みで楽しさ
を分かち合っていた。

同情を誘おうと、わざとらしくゲホゲホ言いながらみんなの側に近
寄ったが、インストラクタを含め誰も私の緊急事態には気づいてな
く、一人芝居は徒労に終わった。私も何も無かったように話しの輪
に加わったが、みんなの笑顔を見ていると沸々と怒りが込み上げて
きた。

　アクシデントはあったもののラフティングは非常に楽しかった。
それはクルー全員が大きく肯いていたから間違いないだろう。これ
からケアンズに行く予定のある人には強くお勧めしたい。

ただし雨が降りそうな時のラフティングは最悪なようなので、避け
た方が良い。雨が降りガタガタ震えながらやったんでは最悪だ。暖
かい日はオールを使って、他のボートと水のかけっこをするのだが、
寒い日にこれをやると喧嘩になるらしい。まぁケアンズは大抵晴れ
てるから大丈夫だと思うけど。

〜ラフティングの後で〜

ラフティングが終わり、訳の分からない小屋へ全員連れて行かれ、
軽食とアルコールが振る舞われた（うろ覚え）。そこではラフティ
ングをやっている最中に、スタッフが撮影していたビデオの上映会
が行われた。後で購入する事も可能。

ビデオをぼんやり見ながら、同じクルーにいた女３人組みの事を考
えていた。

志「ねぇ聡。一緒のボートに乗ってた女３人組みと夕飯でも食べま
　せん？」
聡「あ〜そうなんだよね〜。俺もそう思って昼飯食ってる時に誘っ
　てみたんだけど、なんか駄目っぽかったんだよね〜」
志「んまぁ！手の早い事。脈なしですか？」
聡「なんか悩んでる感じだったよ。駄目元で誘ってみれば？」
志「うっし！行ってきます！」

とは言っても私は恥かしがり屋なので、ビデオの上映が終わって、
３人がバラバラになるまで行動しなかった。そして一番お気に入り
の子に声を掛けた。

志「ねぇねぇ今日一緒に夕食行かない？」
女「うんいいよ。何の予定も無いから行こう行こう！」
志「よっしゃ！それじゃあ××に１９時待ち合わせね」
女「オッケ〜」

いとも簡単に約束を取り付けてしまった。聡が断られたのは何だっ
たのだろう。私は聡の方に満面の笑みとＶサインを送った。すると
聡はがっくりとうなだれ、苦笑いを浮かべていた。