〜スキューバダイビングをやろう！Ｐａｒｔ１〜

　私と聡は観光地ケアンズに着いたら、絶対にやろうと決めていた
事が二つあった。一つは前回書いたタリー川の激流を下るラフティ
ング。そしてもう一つがグレートバリアリーフを堪能する事だ。

グレートバリアリーフとは全長２０００ｋｍにも及ぶ珊瑚礁で形成
された珊瑚礁群で、色とりどりの熱帯魚や海洋生物が生息している。
そこにいる多くの生物は、日本では水槽の中でしか見れない生き物
達だ。そして水の透明度に定評があるダイビングスポットだ。

　私はそれらを満喫するため、シドニーでスキューバーダイビング
のライセンスを取得していた。聡はライセンスを持っていないなが
らも、体験ダイビングなるものに挑戦しようとしていた。

私はアドヴァンスと呼ばれる更に上のライセンスを取得するため、
ボートに乗り込んだ。期間は２日間。一方の聡も体験ダイビングを
堪能するべく別のボートに乗り込み、２人は別行動を取る事となっ
た。別に２人は喧嘩をしていた訳ではないが、毎日同じ顔を突き合
わせるのではなく、別行動をする日も必要だろう。

　グレートバリアリーフで行われるダイビングは、ボートダイブと
呼ばれるものがほとんどで、その名の通りボートから海へと飛び込
む方式だ。私の乗ってる小さなボートは、沖に停泊している大きな
船へと高波を裂きながら沖へ沖へと進む。

「う…」

その大きな船は宿泊設備や食事の用意なども出来る、かなり大きい
船で１００人近い人間が宿泊できるようになっている。

「ぐぇ…」

そして事前の説明だと、ほとんど揺れることがないので、船酔いす
る人でも大丈夫だということだ。

「ゲロッピ！」

そのほとんど揺れないと言われる船に着く前に、ボートのトイレで
昨日の夕食をぶちまけた。ティッシュで涙と口の周りを拭いてから、
ボートのデッキに戻り、「来なきゃよかった」と心の中で呟いた。

　水平線を見つめながらデッキでひざを抱え、セカンドインパクト
に備えていると、遠くの方に大きめの船が姿を現した。

「う…」

と来ていたのだが、安心したのか気持ちは楽になっていった。しか
しいざ乗り込んでみると船は揺れていた。ボートは波の影響をもろ
に受けて早いリズムで揺れるのだが、船は非常に大きくゆっくりと
したリズムで揺れていた。「来なきゃよかった」と心の中で呟いた。