〜キャンプ場に泊まった日〜

　地図に載らない小さな街「フィッツロイ・クロッシング」（嘘）。
いままで泊まってきた街にはＹＨＡやバックバッカーがあったが、
ここにはそれがない。あるのはキャンプ場だけ。キャンプ場といっ
ても日本の施設のように小屋とかがあるわけではなく、敷地内にキ
ャンピングカーを乗り入れたり、勝手にテントを張って泊まるだけ
だ。そんな施設だから当然料金も安い。お一人様Ａ＄８程度。当時
の日本円で６００円ちょい。

僕たちはポンコツ車にテントセットを積み込んでラウンドしていた
ので、キャンプ場に泊まれる。テントの大きさは大人３人がぎりぎ
り横になれる大きさだ。僕たちはキャンプ場に到着して、早速テン
トをスタンバイした。長い間、トランクに詰め込んでいたせいかテ
ントの中は悪臭がする。まぁキャンプ場の芝生の上で寝るのよりは
全然ましだ。

テントを張り終えて一服。そして僕たちは夕食の準備に取り掛かっ
た。この日の食料はいつどこで購入したかわからない、袋タイプの
インスタントラーメン。オーストラリアの中華街で売っている日清
製品だ。車に積んでいたガスボンベと中華なべを取り出し、スタン
バイＯＫ。水が沸騰した時点で、麺とスープを中華なべに入れてし
まい、ぐつぐつとラーメンを煮込む。

僕は硬麺タイプが好きなので、麺が少しほぐれたところで中華なべ
に手を伸ばしてしまう。聡は普通の硬さの麺を好むのだが、のんび
りしていると僕に全部食べられてしまうので、負けじと中華なべに
箸をのばす。ラーメンのにおいは日本にいた頃を思い出させてくれ
る。うまい。僕たちは持っていたインスタントラーメン３袋「ビー
フ」と「エビ」、「ホットチリ」味をすべてたいらげた。

　キャンプ場には僕たち以外にも、オージーと思われるお客さんが
キャンピングカーで訪れていた。こんなへんぴな街にくるアジア人
は珍しいのか何人かが話し掛けてきた。

オ「How's gone」（スペル不明）
志「Yeah!」

聡「おい、志帆よ。さっきから得意げにオージーと話してるけど、
彼らが言っている『はうずごーん』ってなんだ？」
志「え、意味なんて知らないっすよ。『やってるかい！』みたいな
意味じゃないですかね？」
聡「雰囲気で会話するなんてお前はすごいやつだ！俺も見習う
ぞ！」
志「Yeah!」

この程度の英語力でもオーストラリアでは生きていけます。

　食事が終わると就寝の時間。後片付けをしていると、聡がお腹を
さすり始めた。

聡「あーなんか調子ワリー。志帆は大丈夫？」
志「Yeah!まったく問題なし」

　聡はそのまま公衆便所に向かい、しばらく帰ってこなかった。お
そらく硬麺があたったのだろう。うっしっし。「大丈夫ですか？」
と満天の星空に見上げながら声をかけた。その後、２人でテントに
入って眠りについたが、聡だけは何度かトイレへと向かった。