〜ブッシュファイヤー〜
　オーストラリアは南半球なので日本とは季節が逆になる。日本が
夏ならオーストラリアは冬。サンタクロースがサーフボードに乗っ
て海からやってくる国なのだ。そのため９月のオーストラリアは冬
真っ盛りなのだが、それは一部の地域に限ってのコト。シドニーや
メルボルンなどオーストラリアの南に位置する場所だけであって、
フィッツロイ・クロッシングやこれから向かうブルームへの道は非
常に熱い。

時速90キロで走る車の窓を開けると、入ってくるのはドライヤーの
ような熱風。たとえクーラーがなくても、窓を締め切っていたほう
が外より車内の温度を低く抑えられる。そしてこの地域はステップ
気候という乾燥が激しい場所。至る所に植物は生えているのだが、
ブッシュファイヤーという火事が頻繁に発生する。道路の両脇に生
える樹木も静かにバチバチと音を立てながら燃える。タイヤが溶け
ないか心配しながら火の間を駆け抜ける。

けどこんな場所でも野生動物は生息しており、野良牛がのんびりと
車道を横断していたりする。

志「聡！見てくださいよ。牛が僕達の行く手をさえぎってますよ。
　　記念に一枚撮っておきましょう」
聡「お。本当だ。なんか映画のワンシーンみたいだな」
志「昔のアメリカ映画なんかに出てきそうなシーンですね」
聡「それにしても旨そうだな。こいつらがオージービーフか」
志「映画では牛の行列が途切れるまで何時間も待たされたりするん
　　ですよね」
聡「こいつらが日本に運ばれて食卓にのぼるわけか」
志「夜になっても行列が途切れなくて主人公が眠っちゃったりして」
聡「こいつらって生きながらブッシュファイヤーであぶられている
　　から、すでにレアなんだよな。日本で食べる時に「レアにして
　　下さい」なんて言ったらウェルダンになっちゃうかも。気をつ
　　けなくっちゃ！」

話がかみ合わないまま僕達はブルームに向かった。

レアの牛ちゃんです。一匹はすでに真っ黒でウェルダンになってい
ます。聡のことをスゲー睨んでいます。写真を撮り終えた後、聡が
「アクセル踏んでみ」と言ったかどうかは忘れてしまいました。