なんば駅から京都駅まで約1時間。ホテルに戻るともうぐったり。
僕は部屋に備え付けの風呂に入って、即効ベットに潜り込んだ。明
日は別行動の日なので、寝転がりながら行く場所を検討する。一方
のモリモリは神戸まで足を運ぶと言っていた。なんでも「神戸在
住」という漫画を読んでえらく感動したらしい。漫画に登場した
シーンの場所に行くんだそうだ。
　疲れがたまったせいか数分で意識が遠のいていく。おやすみなさ
〜い…。と思っていたらモリモリが絶叫した。

「あー！コンタクト落とした〜。目の中に入ってると思ってずっと
目ん玉をぐりぐり触ってた〜。ちょっとどこかについてない？」
ブー（屁）

　布団の中でうす目を開けてモリモリを見た。顔の周辺や浴衣の前、
ベットの近く、床を探したがどこにもない。

「あれ〜おかしいなー。この部屋に入るまでは絶対に入ってたのに。
どこで落としたんだろう」ブー（屁）

　そういうと彼はベットの上にそっと立ち、浴衣を脱いでブリーフ
一枚になると、スローな動きでコンタクトを探し始めた。

「やっぱりないよ〜。もしかして目玉の後ろに入ってるのかな。ち
ょっと見てくれる？」ブー（屁）

　モリモリは目をクルクルとまわしていたが、やはりコンタクトは
入っていなかった。ちなみに、彼はさっきから屁ばかりしているが、
後天性の病気なので仕方がない。感情が高ぶると激臭爆音の屁が出
てしまうのだ。本人が言うには「人前じゃないとこの症状は表れな
い」らしい。そこが彼の悩みらしい。
　モリモリは浴衣を着ると、ベットの上でうつ伏せになり肩を小刻
みに震わせながら嘆いた。

「ダメポ。もうダメポ…」（涙）

　彼は2ちゃんねらーである。

「ダメポ」ブー（爆）

　僕はベットに潜り込んだ。布団の中で耳をすますと、屁の音と高
笑いが聞こえた。「あいつ絶対わざと屁ぇしてる！」。30代男ふた
り旅の初日が終わった。

　1日目と2日目に泊まったアパホテルの部屋。料金は
ツインルームで1万5000円。ひとり7500円ずつですな。
場所は京都駅の中央口を出て左に曲がり、徒歩3分くら
いの所。部屋がきれいでホテルマンの態度が丁寧なの
が良い感じ。うれしいのはキャンセル料金が一切かか
らないところ。気軽に予約しても急なドタキャンに対
応できます。

「もうダメポ。もうダメポ」。彼は泣きながら無くし
たコンタクトレンズを悔やみつづけた。