〜女の子と一緒にムービーワールド〜
ワーナーブラザーズ・ムービーワールドで女２人組みを発見した
のはいいが、私は人に声を掛けるのが苦手で、知らない人にはもち
ろん、偶然見掛けた知ってる人にすらドギマギしてしまうほどであ
る。しかし聡に「かしこまりました！」と言ってしまった手前、そ
ろそろと彼女たちに近づいて行った。
そして１オクターブ高い声で、（そうすると明るい感じになる）
志「もしかして日本語の見学ツアーに参加する人たち？（緊張のあ
まり膝をガクガク揺らせながら）」
女「そうですけど…（やけに高い声を出し、膝をガクガク揺らして
いる小男を好奇の目で見ながら）」
志「やっぱりそうなんだ！いや〜俺達もそうなんだけどさ、なんか
待ち合わせ時間もとっくに過ぎてるのに、誰も集まってないし係
の人も来ないし、どうなってるんだろうね。一緒に係の人を探し
て聞いてみようよ！（その時既に膝の揺れはピークに達し左右の
揺れ幅が３０ｃｍを超えるほど…）」
その時の私にはそれだけ言うのが精一杯だった。それから３人で
聡の方に向ったが、歩きながらも膝はガクガクと揺れていたため、
持ち上げた方の足が更に大きく揺れてしまい、何度か彼女たちのス
ネを蹴ってしまった。
聡の前に到着すると、聡お得意の全然似てない郷ひろみの声帯模写
で彼女たちをお出向かえ。
聡「コンニチハ！サトシで〜す。ジャパーン！！」
女「…」
志「…（突然嘘のように足の揺れが治まる）」
私と彼女たちは聡を無視して、偶然通りかかった係員に日本語ツア
ーの事を聞いた。
係員「おお！そのツアーならとっくに出ちまったよ。あそこに大き
な建物が見えるだろう。今はあの中にいるはずだから、中に入
れてもらいな」
私たちは、”お嫁サンバ”を踊り始めた聡を押さえつけ、建物へと
向った。
建物の中では既に日本語による解説が始っていたが、私たちは遅
れた分を取り戻すべく、音響効果の作り方や合成撮影の仕方を熱心
に学んだ。
余談だが、日本語で説明してくれたのは日本語の喋れるオースト
ラリア人女性だったのだが、この人があまりに早口で話しをするも
のだから何を言ってるのかよく分らなかった。
その早さときたら凄まじく、「こちらをご覧ください！」と言うべ
きところを「こちくさい！」と発音し、「こうやって作られている
んです」と言うべきところを「こうやっつくるんす」と発音する具
合だ。しかもマルシアのような変に丁寧な日本語を使おうとするか
ら、分かりづらさは倍増した。
もうイッチョ余談だが、合成撮影の方法にブルースクリーン（確か
そんな名前）という技法がある。これはその名の通り、真っ青なス
クリーンの前で人間が演技を行うのだが、モニタを通してみると青
い背景なんてどこにもなく、あらかじめ用意してある背景に切り替
わっているという物だ。例をあげると、電波少年の撮影なんかがブ
ルースクリーンだと思います。
ここで見た時の背景は、火災を起こした高層マンションの壁際に人
が取り残され、はしご車で救出するというものだった。合成は見事
なものでなかなか迫力があった。
しかしこれと同じような事を、今は無き鎌倉シネマワールドもやっ
ていたのだが、背景は釣りバカ日誌のスーさんと一緒に釣りが出来
るというものだった。そりゃ潰れるぜ。スーさんと釣りするよりも
はしご車に救出されたいもん。
ちなみにこの見学ツアーは聞くだけでなく、実際に体験する事も出
来ますことよ。限られた希望者だけでございますですけど。
見学ツアーで勉学を終えた私と聡は、早速彼女たちを今宵のディ
ナーに誘うことにした。聡は十八番の全然似てないエルビス・プレ
スリーの声帯模写をしながら彼女たちにこう囁きかけた。
１オクターブ低い野太い声で、
聡「Love me tender♪今夜一緒に食事でもどう？」
女「今夜ですか？ええ大丈夫ですよ。女の子２人だと結構暇なんで」
聡「そいつは良かった〜Love me sweet♪何か食べたい物ある？」
女「そうですねー。今日はシーフード料理を食べようって決めてた
んですよ」
聡「シ〜フ〜ドかいいね〜Never let me go♪じゃあ１９時にマリナ
ミラージュで待ち合わせしようか」
女「分かりました。うちのホテルでマリナミラージュまでリムジン
で送ってくれるサービスがあるので、リムジンで伺いますよ」
聡「おお！そいつは豪勢だね。You have made my life complete♪
じゃあ１９時を楽しみにしてるよ。じゃあまたね」
女「それじゃあ」
聡、志「And I love you so♪(Elvis Presley/Love me tender)」 | 
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