〜一方通行の旅〜
車をSydneyから４００キロ北にあるPort Macquaireに走らせなが
ら、今回のラウンドについて考えてみた。旅に出るという時、大抵
の人がそうだと思うが、まずは目的地を決めて、出発や帰国の日程
を決めて、出発の日にちが近づいてきたら荷物の整理をするという
感じではないだろうか？
しかし今回の旅は違う。明確な目的地と帰る日にちが決まっていな
い。聡は帰りのチケットの関係で１９９８年１０月１日までに、シ
ドニー空港に到着していなくてはいけないのだが、私には何もない。
一応ビザの期限はあるのだがどこへ行くのも自由だ。その自由の感
じが、なんとも心地良い不安感を掻き立ててくれる。
無言のまま車を走らせていると、聡が鞄から１本のテープを取り
出し、カセットデッキに挿入した。
聡「このテープは日本の友達から、志帆に渡すように頼まれてたテ
ープなんだ。ラウンドしながら聞いてくれってさ」
♪OOH, MY LITTLE PRETTY ONE, PRETTY ONE
WHEN YOU GONNA GIVE ME SOME TIME, MY SHARONA?
WILL YOU MAKE MY MOTOR RUN, MY MOTOR RUN?
GOT IT COMING ALL FOR THE NIGHT, MY SHARONA♪
Song is My Sharora/Artist is The knack /in1979
志「１曲目はマイシャローラですか懐かしい曲ですね。ちなみにこ
の曲の唄い出しって
♪おまえの尻は！尻は！他とは違うぜマイ〜シャローラ♪
って聞こえません？」
聡「聞こえねーよ。この馬鹿！」
志「ぎゃはははは」
笑い声も高らかに車は時速１２０ｋｍで高速道路を走り抜ける。
オーストラリアの高速道路は１１０ｋｍが制限速度になっているの
で真似しないようにしましょう。しかしこの程度の速度であの部分
が壊れるとは・・・。
しばらく車を走らせて高速道路を降りると、シドニーで見慣れて
いた高層ビル街はどこへやら、辺りには豊かな緑とのどかな民家が
広がっていた。そしてシドニーから３時間ほど車を走らせると、走
行距離が２００ｋｍに近づいたので、運転の交替と昼食を採るため
に近くの街に寄った。
昼食はマクドナルドで、日本と同じ味、日本と同じサイズのビック
マックセットを約４００円で頬張る。それと聡は、サングラスが無
いと運転が困難である事に気がつき、眼鏡に取り付ける事が出来る
サングラスを買った。オーストラリアの日差しは目に突き刺さるの
で、短い滞在でも必須アイテムだ。
昼食を済ませると、今度は聡が運転席に乗り込み、車をスタート
させた。車が街を抜けて数分走ると、周りの景色からは民家がほと
んど見えなくなっていた。
志「あ、死んでる…」
聡「本当だ」
見渡す限りの自然の中に１本の道路が南北に伸びている。その道路
の側にカンガルーと思われる死体が転がっていた。恐らく車に轢か
れてしまったのであろう。轢かれ死んだ野良猫を見るよりも少し強
く心が痛んだ。
何も考えずに自然をボーっと見ていると、Port Macquaireに到着し
ていた。
私と聡はラウンド中の宿泊場所をYHAにしようと決めていた。理
由は値段が安い。バックパッカーに比べて綺麗らしい。そして何よ
りも私が既に会員であった事が理由に挙げられる。私は”全豪YHA
エリアマップ”なるものを片手に、Port MacquaireのYHAを探した。
YHAはあっという間に見つかった。がっかりだ。少しトラブルを期
待していたのに…。けどまあいいや、聡は会員じゃないからどう
やって会員になるか見物である。うっしっし！
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